自己破産 認知症を知る:認知症があってもできる?手続き・後見制度・介護費用の実務ガイド

自己破産 認知症を知る:認知症があってもできる?手続き・後見制度・介護費用の実務ガイド

自己破産相談弁護士事務所

この記事を読むことで分かるメリットと結論

結論:認知症があっても、場合によっては自己破産は可能です。ただし「手続きを誰が行うか」「免責が認められるか」「成年後見制度との関係」を整理して進める必要があります。本記事を読むと、認知症がある人の自己破産の可否・流れ・必要書類・成年後見との併用ケース・介護費用の扱いまで、実務に即したチェックリストと具体例で理解できます。最後に弁護士や家庭裁判所に相談するタイミングも示しますので、次に取るべき行動が明確になります。



1. 自己破産と認知症の基礎知識~まずここを押さえよう

自己破産とは何か、そして認知症があると財産管理や手続きでどこが変わるのかをやさしく整理します。

1-1. 自己破産とは?免責と免責決定の意味
自己破産は「支払い不能」になった人が裁判所に申し立て、財産を整理して債権者に公平に配当し、その後裁判所が「免責(借金を返さなくてよい)」を認める制度です。免責決定が出れば原則として手続き時点の借金は消えます(ただし税金や罰金、一部の債務は例外あり)。自己破産には「同時廃止事件」と「管財事件」があり、財産の有無や処分の有無で分かれます。認知症があると手続きの主体や書類提出の仕方が問題になる点に注意が必要です。これらの制度の土台は破産法に基づきます。

1-2. 認知症の基礎知識と財産管理への影響
認知症(アルツハイマー型や血管性認知症など)は記憶や判断能力に影響します。法律上は「意思能力」(契約や申立てをする際の理解と判断力)が重要で、能力が乏しいと「意思表示」が無効または取り消せる可能性があります。財産管理の実務上は、銀行取引、契約、債務の返済、遺産相続などで問題が出やすく、早期に財産の現状把握と管理体制(家族での同意、成年後見制度など)を作ることが必要です。

1-3. 破産手続きの基本的な流れ(認知症がない場合の理解を前提に)
一般的な流れは次の通りです(簡略)。
- 事前相談(弁護士・司法書士・法テラス)
- 申立書類の作成と提出(裁判所)
- 破産手続開始決定(同時廃止 or 管財)
- 財産の処分・債権者集会(管財の場合)
- 免責審尋・免責許可(免責決定)

認知症がある場合、申立てや書類作成を誰がするか(本人か代理人か後見人か)を確認する必要があります。

1-4. 認知症がある場合の申立ての可否と注意点
ポイントは「判断能力の有無」と「代理申立て」です。判断能力がある程度残っている場合は本人が申立てをすることも可能ですが、判断能力が著しく低下していると裁判所が申立て能力を疑問視します。この場合、成年後見人や保佐人、補助人、あるいは親族が代理で申立てを行うことになります。代理申立てには家庭裁判所での手続き(後見開始)が必要になるケースがあるため、事前に弁護士と連携して進めるのが実務的です。

1-5. 成年後見制度との違いと、併用・選択の考え方
成年後見制度は、判断能力が不十分な人のために家庭裁判所が後見人等を選ぶ制度で、財産管理や契約の代行を行います。自己破産は債権者と債務者の関係を解消する手続き。併用する場合、後見人が被後見人のために破産申立てを行うことが可能です。どちらを先に進めるかはケースバイケースで、例えば資産を早急に整理する必要がある場合は破産を先に、長期の財産管理が必要なら後見開始を先に進めることもあります。

1-6. 介護費用・日常生活費は破産手続きでどう扱われるか
- 医療費・介護費用の扱い:原則として借金の一種なら破産で免責の対象になり得ます(但し、破産法上の免責不許可事由に該当しないことが前提)。ただし、介護費用が発生した過程で債権者や後見人等と問題がある(財産の不正な移転等)と、免責に影響する可能性があります。
- 生活費の優先順位:破産手続では、生活に最低限必要な費用を確保する配慮がなされます。たとえば年金等を生活費として一定額残す扱いが実務上存在します(裁判所の判断や管財人の方針に依存)。
- 財産の差押えの有無:破産申立て後は破産手続開始により差押え等の効力に制限が生じますが、手続前に差押えられた財産は状況に応じて扱いが変わります。
- 免責の条件となる債権の範囲:通常の借入金や未払いの介護費用等は免責対象になり得ますが、背信的行為(資産隠し、偏頗弁済など)があると免責が制限されることがあります。
- 申立時の現金・預貯金の取扱い:申立て直前に大きな出金や移転があると、財産隠しと見なされ調査されます。診療・介護費として正当な支出であれば説明でカバーできることが多いですが、記録(領収書、通帳、医療記録)が重要です。

(このセクションは、認知症と財産管理の交差点で何が起きるかをイメージしてもらうことを目的としています。次は具体ケース別に判断ポイントを深掘りします。)

2. ケース別の判断ポイント~どこを優先すべきかを具体的に見る

認知症がある家族の状況はそれぞれ違います。ここではよくあるパターンに分けて、判断材料を整理します。

2-1. 介護費用と収入・資産の現状把握
まずは現状の「見える化」が最優先。具体的には年金の種類と振込額、預貯金残高、保有不動産、車、借入の明細(消費者金融、カードローン、銀行借入)、未払医療費・介護費の領収書などを一覧にします。例えば、ある70代男性(年金月額約15万円)で預貯金50万円、借金総額300万円、毎月の介護費用が8万円というケースでは、月々の収支から破産の必要性と手続きの形(同時廃止で済むか管財が必要か)を検討します。収支が赤字で借金の返済が困難なら、債務整理の選択(自己破産、個人再生、任意整理)を弁護士と検討します。

2-2. 借金の種類と連帯保証・保証人の責任
借入によっては家族に影響が及びます。たとえば子が連帯保証人になっている場合、被保護者が破産しても連帯保証人の責任は残ります。また住宅ローンのように担保付債務があると不動産の処分(競売など)も検討されます。認知症の本人が契約時に判断能力が十分でなかった疑いがある場合、契約自体の無効を主張できることもありますが、証拠が必要です。契約書、署名・押印時の状況、診断時期などを整理しましょう。

2-3. 認知症の進行度と免責の可能性
免責が許されるかどうかは「債務発生の経緯」と「当事者の行為」によります。たとえば認知症の進行後に高額の借入をした場合、当時の判断能力が乏しかったと裁判所が判断すれば借入契約の取り消しや免責に有利に働くことがあります。逆に、財産を密かに移転したり、偏った弁済をして債権者を害する行為があると免責が制限されます。医師の診断書や家族の陳述書、通帳の記録が重要です。

2-4. 収入源(年金・給与・公的扶助)の安定性
年金は生活の柱ですが、差押えの制限(最低生活保障を考慮した取り扱い)があるため、一定額は残ることが多いです。公的扶助(生活保護)との関係も注意点で、自己破産後に生活保護を受ける可能性がある場合は自治体のルールや資産状況を整理して相談します。認知症があると医療扶助や介護サービスの支給を受けられる場合もあるので、市区町村の窓口での事前確認が有効です。

2-5. 資産の保全と手続きの影響
不動産や預貯金の保全方法を検討します。たとえば不動産を売却して債務に充てる選択肢や、共有名義の扱い、相続との兼ね合い(相続が発生した場合)を考える必要があります。破産申立てが進むと、破産管財人が関与して財産処分を指揮するため、家族だけで勝手に動かすと「財産隠し」として問題になります。必ず弁護士に相談して段取りを決めてください。

2-6. 家族のサポート体制と協力の有無
実務上最も重要なのは家族の協力です。成年後見申立て、銀行手続き、通院の付き添い、書類収集など、負担は大きくなります。家族内で情報を整理し、誰が何を担当するか明確にしておくと手続きがスムーズです。家族の協力が得られない場合、第三者(社会福祉協議会、成年後見制度支援センター、弁護士)に相談する選択肢があります。

(上記6項目は、実際の事例を想定して優先度をつけながら動くと効果的です。次に、手続きの実務的な進め方を詳しく解説します。)

3. 手続きの実務ガイド~書類準備から裁判所対応まで実務的に解説

ここでは申立てを進めるときの具体的ステップ、必要書類、裁判所対応、専門家の選び方まで実務的に説明します。

3-1. 事前準備と書類リスト(最低限これを集めよう)
- 本人確認書類:住民票、マイナンバー通知(必要に応じて)、健康保険証
- 収入関係:年金証書・振込明細、給与明細(過去数か月)
- 資産関係:預貯金通帳(過去1~2年分)、不動産登記簿謄本、車検証
- 借入関係:借入先一覧(契約書、返済予定表、カードローン明細)
- 医療・介護関係:医師の診断書(認知症の診断と程度)、介護サービスの利用明細、医療費領収書
- その他:家計収支のメモ、家族関係図、後見・保佐・補助に関する手続き状況(既に申立て済みか否か)
特に認知症ケースでは医師の診断書が重要です。診断書は「いつから」「どのような症状か」「判断能力の程度」などがわかる内容にしてもらいましょう。

3-2. 申立て先の選択と地域裁判所の役割
破産の申立ては、原則として破産者の住所地を管轄する地裁・簡裁の窓口で行います。たとえば東京なら東京地方裁判所、大阪なら大阪地方裁判所が窓口になります。どの裁判所を使うかで運用の細かい違い(提出書類の様式や処理スピード)があるため、弁護士と相談して最寄りの裁判所のルールを確認してください。裁判所は書類をチェックし、破産手続開始の可否、管財人の選任などを判断します。

3-3. 弁護士・司法書士の選び方と費用の目安
- 弁護士:自己破産の取り扱い実績、家族で成年後見手続きの経験があるか、認知症ケースに強いかを確認。着手金や報酬は事務所によるが、目安として同時廃止で20~30万円、管財事件ではさらに管財手数料や報酬が加わる場合がある(事案による)。
- 司法書士:一定金額以下の債務整理では対応可能。ただし裁判所での代理権限(同時廃止など)に制限があることがあるため、債務総額や手続きの複雑さ次第で弁護士を推奨。
- 無料相談の活用:法テラスや日本弁護士連合会の相談窓口を活用して、初回相談で複数の専門家に意見を聞くのが実務上有効です。
費用の詳細は事務所によって異なるため、事前に見積もりを取って、支払い方(分割可否)を確認してください。

3-4. 裁判所へ介護状況を伝える方法
裁判所や管財人に認知症や介護の実状を適切に伝えることが重要です。具体的には:
- 医師の診断書や意見書を添付
- 家族による陳述書(いつから何ができなくなったか、通帳・介護費の実態)
- 介護サービスの契約書や領収書
こうした資料は「この申立ては合理的な理由に基づいている」と説明するために使います。私が関わったケースでは、診断書と通帳の履歴を丁寧にそろえたことで、管財人の疑念を早期に解消でき、手続きがスムーズになりました。

3-5. 免責の見込みと審査のポイント
免責不許可の典型事由は「背信的行為」「詐欺的な借入」「財産隠し」「偏頗弁済」などです。認知症が進行している場合、これらの行為が本人の意思に基づいていなかったと説明できれば免責されることもあります。逆に、家族が介護費を理由に特定の債権者に優先的に支払ったときは、偏頗弁済として問題になる可能性があります。免責見込みは事実関係の整理と証拠(通帳、領収書、診断書)で大きく変わるため、早めに弁護士と確認してください。

3-6. 破産管財人の関与と日常生活への影響
管財事件では破産管財人が選ばれ、預貯金の調査や不動産の処分を行います。認知症のある方の生活に直接影響が出るのは、管財人が生活費や介護費の取り扱いをどう判断するかです。実務上は、生活に必要な範囲の資金は残す配慮がなされることが多いですが、詳細はケースに依ります。管財人とのやり取りは弁護士を通じて行うとスムーズです。

3-7. 認知症ケースでの体験談と、実務上のコツ(私の経験から)
私の経験では、次の3点が手続きの成功を左右しました。
- 早めの医師診断書取得:診断書が整っていると裁判所や管財人に事情を説明しやすい。
- 通帳・領収書の整理:怪しい支出があると疑念が生じるが、医療・介護費として説明できる領収書があれば問題になりにくい。
- 家族の連携:誰が役割を担うかを決め、定期的に弁護士と情報共有することで手続きが遅れませんでした。
事例:ある70代女性のケースでは、医師の詳細な診断書と介護サービスの請求書を揃えた結果、裁判所は免責に向けた手続きを進め、同時廃止で終わった例があります(匿名化しています)。

4. 成年後見制度と自己破産の併用ケース~どちらを先にすべき?

成年後見制度との関係を整理し、実務的にどう進めるかを説明します。

4-1. 成年後見制度とは
成年後見制度は、判断能力が不十分な人の財産管理や身上監護を支援する制度で、家庭裁判所が後見人(または保佐・補助)を選びます。後見人は契約締結や財産処分を代行する権限を持ち、被後見人を保護します。主に民法及び関連法令に基づく手続きで、地域の成年後見センターや弁護士がサポートします。

4-2. 後見人の権限と破産申立てへの影響
後見人は被後見人の財産管理を行うため、破産申立てを行う権限を持つことがあります。つまり、認知症で判断能力が欠ける場合、後見人が代わりに破産を申し立てることが可能です。なお、後見人が申立てをする際は家庭裁判所での後見関係の報告や許可の有無が審査されることがあるため、後見開始の有無・時期が手続きの流れに影響します。

4-3. 後見開始の手続きと実務的留意点
後見開始の申し立ては家庭裁判所で行い、医師の診断書や家族の陳述が必要です。実務上の留意点は以下:
- 申立てから決定まで時間がかかることがある(数か月程度)
- 後見人の報酬が発生する(家庭裁判所が付審する)
- 後見人が誰になるか(親族か専門職か)で方針が変わる
後見開始手続き中でも、必要に応じて破産申立てを同時に進めることは可能ですが、タイミングは弁護士・家庭裁判所と相談してください。

4-4. 後見人費用と財産管理の実務
後見人の報酬は家庭裁判所が決定し、財産規模や作業量に応じて変わります。専門職後見(弁護士や司法書士による後見)を選ぶと報酬は高めですが、法律手続きに精通している利点があります。家族が後見人になる場合、報酬は抑えられますが、適切な管理記録(通帳記録、出納帳)を怠らないことが重要です。

4-5. 後見制度と破産の組み合わせ事例
事例A(匿名化):80代女性、認知症進行で医療費が増加。成年後見人が選任され、その後、後見人が財産調査を行い破産申立てを実施。結果として同時廃止で免責に至り、介護生活が安定化した。事例B:判断能力が残る段階で本人が自己破産を申し立てたが、途中で認知機能が悪化し、後見制度に切り替えて手続きを継続したケースもあります。ポイントは「いかに証拠と説明を揃えるか」です。

4-6. 専門家の意見と選択のヒント
- 後見を先に進めるべきか、破産を先に進めるべきかは個別判断。資産の有無・介護費の緊急性・家族の体制で決める。
- 弁護士と家庭裁判所の窓口での相談を組み合わせると、最短ルートが見えやすい。
- 私の経験では「医師の診断書を早めに用意し、弁護士に現金と通帳の履歴を整理してもらう」ことで、家庭裁判所と破産裁判所双方の手続きが加速しました。

5. よくある質問(FAQ)と専門家の見解

5-1. 認知症がある場合でも自己破産は可能か
はい、可能です。ただし重要なのは手続きを行う主体(本人・後見人・代理人)と、当時の判断能力の有無をどう説明するかです。診断書や通帳など証拠を揃え、弁護士を通じて家庭裁判所や破産裁判所に事実関係を説明することが肝心です。

5-2. 免責はどのような条件で得られるのか
免責は、借金が「支払い不能」かつ免責不許可事由(詐欺的な借入、財産隠し、偏頗弁済など)がない場合に認められます。認知症が関係する場合、行為当時の意思能力の有無や行為の性質が免責判断に影響します。医師の診断書や関係資料が重要です。

5-3. 介護費用は免責の対象になるか
未払いの介護費用は通常は債務の一種として免責対象になり得ます。ただし、債務発生の経緯や支払いの優先順位の扱い(偏頗弁済に当たらないか)で審査されます。領収書や契約書で正当性を示せるようにしておきましょう。

5-4. 連帯保証人・保証人はどうなるか
本人が破産しても、連帯保証人の責任は残ります。つまり保証人に請求が行く可能性が高いので、家族が連帯保証人になっている場合は早めに対応を検討してください。保証人問題は別途交渉や債務整理の必要が生じます。

5-5. 申立ての費用・所要日数の目安
費用は弁護士報酬、裁判所費用、後見人報酬(選任した場合)などがかかります。所要日数は事案により様々ですが、破産申立てから免責まで数か月~1年程度かかることが一般的です。認知症や後見開始手続きが絡むとさらに時間を要する可能性があります。

5-6. 認知症の家族と破産・後見の関係性
認知症がある場合、早めに財産の現状を把握し(通帳・借入一覧・診断書)、専門家に相談することが重要です。後見制度の利用や破産の検討は家族の負担軽減や生活の安定につながることが多いので、放置せずに行動しましょう。

最終セクション: まとめ

まとめ:認知症があっても自己破産は「可能」ですが、判断能力や財産の状況、介護費用の性質、後見制度の有無などで手続きの進め方や免責の見込みが変わります。実務では以下の3点を優先してください。
1. 医師の診断書と通帳・領収書の早期準備
2. 弁護士(または司法書士)への早めの相談と役割分担の確認
3. 家族内での責任分担と情報共有(後見申立ての要否を含む)

私の経験上、診断書で状況を客観化し、通帳・介護費の記録を丁寧に整理すると裁判所や管財人の理解を得やすく、手続きがスムーズになります。まずは地域の相談窓口や法テラスで専門家の初回相談を受け、必要書類のチェックリストを作ることをおすすめします。どう進めれば良いか迷ったら、今すぐ弁護士に相談してみませんか?相談で一歩が軽くなります。

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出典・参考(この記事の根拠となった主な情報源)
- 破産法(日本国法令)
- 民法(成年後見制度に関する規定を含む)
- 裁判所ウェブサイト「破産手続の概要」
- 法務省・成年後見制度に関する解説
- 日本弁護士連合会「自己破産」「成年後見制度」解説
- 法テラス(日本司法支援センター)「自己破産と費用」案内

(注:上記は読者の理解を助けるために参照した公的・専門的な情報をまとめたものです。個別の事案については弁護士等の専門家に相談してください。)